為替の世界はお金という武器で相手のお金を奪うための戦争といってもいいかもしれません。
実際に現代社会は経済によって利益を奪い合うようになっているので、通貨戦争というのは決して誇大な表現ではありません。昔は力で土地や資源を奪い合っていたのが現代では形を変えて経済力によって利益を奪い合う世界になっているのです。
その利益の奪い合いの中で大きな役割を発揮しているのは通貨です。通貨の価値によって自国の利益が他国の損となったり、その逆も容易にありえます。円安になれば日本の輸出業は儲かりますが、その割を食うのは通貨高になって輸入している側の国や、通貨が割高になって商品が売れにくくなった競争相手たちです。
そんな通貨市場に参加している人たちは、みな自ら志願して戦おうとしている一兵士だといっても過言ではないかもしれません。現実、市場においては破産してしまい市場だけでなく人生からも退場を迫られる人も少なからず存在します。FX取引を開始するのは簡単ですが、通貨市場に参加するにはそれなりの覚悟が必要なのです。
市場ではヘッジファンドや公的機関の資金量の多い参加者によって値動きが理屈に合わず大きく動くときもあります。2016年現在日銀が大規模緩和を継続し、アメリカが利上げに踏み切ったにも関わらず急激な円高ドル安へと傾いている状況は理屈に合わないまさにいい例といっていいでしょう。
闘いにおいて武器は多いほうがいいので、資金量はそのまま優位性の一つになります。資金量が多く高度な取引システムを有したヘッジファンドや金融機関が参加している世界に、脆弱な環境で大した資金量も持たない個人が参加すれば、すぐに身包みはがされてゲームオーバーとなることは目に見えています。日本では2010年8月1日からレバレッジ最大50倍、2011年8月1日からはレバレッジ最大25倍のレバレッジ規制が開始されていますが、これは個人がFX取引でさらに不利になるための愚策としかいいようがありません。レバレッジをコントロールできずに破たんするような人はレバレッジ規制をしたところで破たんします。投資・投機というものはレバレッジに関係なくそれ自体にすでに大きなリスクがあります。その根本を間違えている人が破たんするのです。レバレッジがあることで変わるのはその破たんまでにかかる時間の差に過ぎません。レバレッジがあることでより早く資金が枯渇し市場から手を引くことができる分だけ、ハイレバレッジであったほうが破綻者にとっても時間を節約できてよいという見方もできます。
資金量において不利な個人がFXで勝つことは不可能のように思えますが、個人には個人にしかできないことがあります。通貨の取引がお金を使った闘いだったとしても、個人は自分がどちらのチームの味方に付くかは自分で決めることができます。また資金が大きくない分、資金を移動させることも資金が大きなヘッジファンドに比べると容易です。個人は顧客や第三者への取引に関する報告義務もありません。全体的な流れを見極めてチャンスのある時に資金の動きについていければ、個人でも値動きによる差益を得ることは不可能ではないのです。